松山リハビリテーション病院

[症状別]高次脳機能障害について

各症状の紹介を行います。実際には症状が単独で出現することは少なく、いくつかの症状が重複して出現することが多くあります。また、症状も定型的なものばかりではなく、人によって症状が強く出る場合、弱く出る場合など様々です。

注意障害

注意障害には主に4つの症状が見られます。

1.覚醒度低下
表情が乏しくなったり、『ボーっとした』感じになったりして、全ての面で反応が遅くなる。
例)病気になってから自分からは何もしなくなってしまった。
2.持続力低下
別の刺激(周りの声や音)に注意が向いてしまい、本来注意を向けるべき対象に集中して取り組めなくなる症状。
例)周囲の事が気になって、仕事をしていても度々中断してしまう。
3.転導性低下
(2)とは逆に、周りの状況に気がつかないために、行動へうまく移れなくなる症状。
例)テレビを見ていたときに電話が鳴ったが、気がつかなかった。
4.転換性注意力低下
その時の状況に応じた注意の変換がうまくできないために、同じような行動を繰り返したり同じことを何度も言ってしまう症状。
例)探し物をするときに、同じところのみ探し続けてしまう。

記憶障害

記憶障害

記憶にはさまざまな分類があります。

ケガや病気をしたときを境目にして、前後の記憶に障害が出現したときの分類
1)前向性健忘
発症後に新たに経験したことが思い出せなくなる状態。
例)事故後、自分や家族の名前は問題なく思い出せるが、新しく出会った医師や看護師の名前が覚えられない。
2)逆行性健忘
発症前に経験したことが思い出せなくなった状態。
例)事故後、新しく出会った医師や看護師の名前は問題なく覚えられるが、自分や家族の名前を思い出せない。
情報の保持時間による障害の分類
1)短期記憶障害
読書や計算などの時に使われる、短い時間の記憶が障害される。
例)ついさっき食事したことを忘れて、「ごはんまだ?」と聞いてしまう。
2)長期記憶障害
今まで経験したことを永続的に保持される能力。
例)自転車の乗り方が分からなくなる。
会社から自宅までといった、通い慣れた道順が分からなくなる。

遂行機能障害

物事を行うには、判断力と思考力が必要です。遂行機能障害とは、言語・記憶・行為などの高次脳機能が保たれているにもかかわらず、これらを有効に活用できない障害と言えます。遂行機能障害を細かく分類すると、4つの症状が見られます。

遂行機能障害
1.目標の設定の障害
未来における目標を明確に設定できない。
例)何かを始めるときに「○○をしたら、□□になる…」といった予測を立てずに、手当たり次第に物事を進めてしまう。
2.計画立案の障害
目標を達成させる為の計画の段取りを立てられない。
例)何かを始めるときに「○月□日までにこれをして…」といったように、具体的な締め切り設定できない。
3.計画の実行の障害
正しい手順で計画を開始・持続できない。
例)「○○をしてから□□をして、最後に△△をする…」と段取りを組んでいるのに、いざ始めると気が向いた順で作業を行ってしまう。
4.効果的・効率的な行動の障害
目標に近づくように、自己の行動を評価し、必要に応じて修正できない。
例)「予定していた○○さんが休んでしまった…」と、急な予定変更がおこったときに、その状況に応じた計画の変更が出来ない。

社会的行動障害

人が世の中で生きていくためには、人が作る社会の中でうまくやっていく能力が必要です。
社会的行動障害では脱抑制・衝動性、自発性の低下、複雑な社会状況での適切な反応の障害などにより、社会でうまく生きていくことを阻害する要因となります。

代表的な症状としては以下のものがあります。

1.意欲、発動性の低下
何事にも意欲が持てず、一日中ボーっとして過ごす。
2.情動コントロールの障害
イライラした気分が徐々にエスカレートし、怒りを爆発させてしまう。
また、突然大声を出したり、暴力、性的行為などの反社会的行為をおこす。
3.対人関係の障害
親密すぎる発言や行動、急な話題転換に対応ができない、抽象的な指示に対する理解が困難となる。
4.依存的行動
人格機能が低下し退行を示す。
5.固執
習慣的な行動であれば問題ないが、新たな問題には対応ができず、その際に1つのことがらに固執してしまう。

失語症

口やのどには麻痺が無いのに言葉が出てこなくなったり、聴力や記憶力には問題がないのに言葉の意味が分からなくなってしまう症状です。失語症には「運動性失語」や「感覚性失語」などがあります。

1.運動性失語
話を聞いて理解することは可能だが、言葉が出てこなくなる症状。
例)食事中に「醤油とって」とこちらから言っても返事が出てこないが、正しく醤油は渡してくれる。
2.感覚性失語
スラスラと話すが『言い間違い』が生じ、話を聞いたときの理解も障害される症状。
例)「めがね」を「時計」や「みがね」と言い間違える。
例)道を歩いているときに「右に曲がってください」と伝えると、「分かった」と返事は出来るが、本当は言われた意味がよく分かっておらず違う方向に歩いていってしまう。

失行症

手や指に問題が無く、記憶にも問題は無いのに、食事や字を書くといった、日常の簡単な事が出来なくなる症状が出現します。失行症には「観念運動失行」、「観念失行」などがあります。

1.観念運動失行
特に意識しないときは問題なく行える動作が、意図的にしようとしたり、真似をしようとするとできなくなる症状。
例)箸を使って、問題なく食べているのに、「どうやって箸を使うのですか?」と聞くと、どうしたらいいか途端に分からなくなってしまう。
2.観念失行
行為の順番や、道具の使用方法などが分からなくなる症状。
例)ズボンを履こうとするが、どうしていいか分からず着替えられない。

失忍症

見たり聞いたり触ったりした物の名前を言ったり、その意味が思い出せない症状のことで、「視る」「聞く」「触る」など、どの感覚にも生じる症状です。
多く見られる失認症は、視覚に関係する「視覚失認」と、「身体の感覚」に由来する身体失認に分かれます。

1.視覚失認
目で見ている物が何なのか分からない。
目で見ている物が何かは分かるが、それが何に使うものか、何と言う名前なのか、関連付けることが出来ない。
例)机の上の「はさみ」を見ても、何が置いてあるのか全く分からない。
にもかかわらず、形を書き写すことは出来る。
例)机の上の「はさみ」を見たときに、どんな形状なのかは分かるが、それが何なのか全く分からない。
2.身体失認
自分の身体が認識出来ない状態。麻痺がないにもかかわらず、認識出来ていない側の身体を使わない、身体部位の場所が分からなくなるといった症状を呈します。
例)化粧をしたときに、認識していない側の口紅を塗らないまま作業を終えてしまう。

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